PROJECT 04. UL規格対応 煙感知器 PROJECT 04. UL規格対応 煙感知器

PROJECT 04. UL規格対応 煙感知器アメリカの新規格に挑め。
自分の意思を貫いた煙感知器開発。

アメリカ保険業者安全試験所が策定する製品安全規格(以下、UL規格)が2020年5月に改正される。その内容は「ポリウレタンフォームの燃焼火災」および「ポリウレタンフォームの燻焼くんしょう火災」での作動試験、そして「ハンバーガー調理の煙」での不作動試験という3つの火災試験が追加されるというものだ。ソファーなどのクッション材としても使われているポリウレタンフォームが燃えた場合の煙と、ハンバーガーの調理で発生した煙を的確に識別できる煙感知器が求められている。

ホーチキの煙感知器も例外ではなく、この規格にクリアしなければアメリカでの販売はできなくなる。そこで、新たなUL規格に対応した煙感知器を開発するプロジェクトが発足した。

プロジェクトチームのメンバーとして開発に携わっている、宮城開発研究所の鷲頭わしずに、プロジェクトについて語ってもらった。

これまでにない開発プロセス

開発を始めるにあたり、プロジェクトチームは独自に5つの製品コンセプトを掲げた。
それが「火災検出能力向上」、「非火災報低減」、「検煙部高さ低減」、「施工性向上」、「メンテナンス性向上」だ。

「短期間での大きな課題解決が求められるプロジェクトでした。そのため、従来の開発プロセスそのものを見直し、効率化を図る必要がありました。」

従来の開発では、現状把握と課題確認をし、研究開発を実施した後、試作品を作っていた。各フェーズを段階的に進めていく流れをとっていたのだ。

「今回は、はじめに特許や論文、製品も含めた現状分析をおこないました。それをもとに仕様を検討して、試作モックを作って検証しました。その後は光学/流体設計と、煙の検知空間の設計を同時並行で進めて。そして煙を識別する独自のアルゴリズムを確立したのち、試作品を作って評価試験をおこなうという流れでした。
従来のプロセスと違い、研究部分と試作品作製をほぼ同時並行で進めていたため、短期間で完了することができました。」

※UL規格申請中(取材日時点)

新たな手法で煙の流れを可視化

「当初立てた製品コンセプトのなかでも、火災検出能力向上(煙の流入性向上)に関しては最も苦労しました。
煙の流入性を向上させるにあたり、従来の解析手法では、感知器内部に流入する煙の動きを把握することが難しかったんです。火災や調理により発生する煙は、流体としてさまざまなパターンがありますから。」

そこで新しい試みとして、可視化実験装置による物体周りの流れの確認や、流体解析ソフトを用いた動画シミュレーションを実施。それによって、煙の流れを可視化することを可能にした。そして、実際の評価試験と組み合わせながら検証をおこなっていった。

「煙の流入性を向上させるために、約半年の間に200回くらい火災試験を繰り返しました。
感知器は、設置の向きによっても煙の流入量が変わってしまいます。それによって失敗してしまうケースが何度もありました。そのたびに一から考え直さなければいけなかったので、非常に大変でしたね。
論理的な思考ばかりに頼るのではなく、頭の中でイメージすることも大切にしました。自分自身が煙になった気持ちで、『こんな場合はどう動くか?』を想像しながらシミュレーションすることもありましたね。」

火災実験所の燃焼実験室。ここで実際に火災を再現し、感知器の性能を検証する。

そして、ポリウレタンフォーム燻焼試験に対応するため、煙感知器の特徴的な部分をひとつずつ小分けにして構造要素ごとに検証し、流入性向上のための試験を繰り返した。

「感知器の外側のカーブを例に挙げると、角度によって煙が構造面から離れたり、失速してしまったりして、検知空間に煙を上手く誘導できなくなってしまいます。そこで、カーブの角度を変えたサンプルをいくつも用意して、実験を繰り返しました。
そのなかから最適な角度を導きだし、『この角度を守ってください』と次の工程に引き渡すことができました。」

独自のアルゴリズムを確立

「煙を識別するためのアルゴリズムを確立するのも大変でした。
ポリウレタンフォームの煙とハンバーガーの煙では、その成分が異なります。何種類もの火災試験を繰り返し実施し、ポリウレタンフォームの煙とハンバーガーの煙それぞれに合うような識別手法をようやく見つけました。その違いを検知する、独自のアルゴリズムを確立させたんです。」

また、製品化にあたり、想定工数内で効率的に組み立てられる方法の実用化にも目途をつけた。

「組み立てに関しては、上から部品を積み重ねていくような、生産しやすい構造を考えました。以前は製品の組み立てを担当していたので、できるだけ工場作業者の目線になって設計をするよう心がけましたね。
部材の選定についても、細かなパーツひとつでコストは変わります。品質を守りながらも、極力コストを抑えられるよう努めました。」

プロジェクトが山場を迎える頃には、毎日のようにメンバーと言い合いになっていたという。そこには、真剣に開発に取り組む鷲頭の姿勢があった。

「上司や先輩関係なく、間違っていると思ったところは『違うんじゃないですか』としっかり向き合いました。自分が納得させられる場面もありましたが、“言い合える環境”がチームにあることがよかったと思っています。」

「ここだけは譲れない」を持つ

今回の開発をきっかけに、社長表彰を受賞した鷲頭とチームメンバー。課題でもあった煙流入性の大幅な向上、独自に生みだしたアルゴリズム、コスト面での貢献などが社内で評価されての結果だった。

「“自分の意思を貫く”ことに対しては、強いこだわりを持って仕事をしています。
仮説と検証を積み重ねて導き出した答えに自信を持ち、“ここだけは譲れない”という気持ちを持つこと。くじけそうになることもありますが、あきらめずに楽しくやっていくことが大切だと感じています。」

今回のプロジェクトで多くの課題に直面した鷲頭。それを乗り越えられたことが、新たなステップに向けた自信にもつながっているという。

「今後は、お客様に『斬新だ』と言われるような動作やデザインを持った、新しい製品の開発にもチャレンジしていきたいですね。」

※所属部署・役職は取材当時のものです。

鷲頭 佳祐

鷲頭 わしず 佳祐

技術生産本部 宮城事業所 開発研究所
センサ開発部 センサ要素技術開発チーム

PROFILE

2013年入社。入社当初は製造課で受信機の製造・検査に携わる。
2015年4月に開発研究所・機構設計課へ異動。
2016年1月から、次世代チャンバー要素技術開発プロジェクトチームに参画し、主に煙感知器の流体に関わる箇所で要素開発に貢献。
現在はセンサ要素技術開発チームに所属し、感知器の要素開発に従事。
プライベートでは一児の父で、妻と子供と流行の曲やダンスを練習中。